北本教授の宇宙教室

小野学園

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X線による宇宙観測の未来(最終回)

前回は、「ダークマター」や「ダークエネルギー」といった、正体不明のエネルギーが宇宙の大部分を構成していることを話しました。これら、正体不明の物に関する謎に加えて、もっといろいろな問題が山積みです。また、これまでの歴史から分かるように、今は、正しいと思われていることも、100年後、いや10年後には修正されているかもしれません。あるいは全く間違っているかもしれません。それらは、実験や観測から事実を調べることと、論理的な考え方とで、正しいのか、修正が必要なのか、あるいは根本的に間違っているのかが明らかになってきます。

 いろいろなことに疑問を持ってより正しく宇宙を観測して、見えてくる事実を論理的に解釈をすることで、科学が進み、人間が考える宇宙観、自然観が変遷していくのです。

宇宙がどのように進化して今のような形になったのだろうか? そして、これから宇宙はどうなっていくのだろうか?何時ごろ、天体が形成されたのだろうか?また、巨大ブラックホールが形成されたのは何時で、それらが周りの環境にどのような影響をあたえてきたのであろうか?また、ブラックホールの性質はどんなもので、そのまわりはどうなっているのだろうか?中性子星の内部はどうなっているのだろうか?降着円盤の構造は今考えられているモデルでよいのだろうか?超新星の爆発のメカニズムやその残骸の進化、そしてそれが宇宙や銀河の進化にどんな影響を与えているのだろうか?宇宙に存在する元素の多くは星で作られ、超新星として星間空間に巻き散らかされているのだけれど、どのような道筋をたどっているのだろうか?星はどのようにして生まれるのだろうか?宇宙で一番初めに生まれた星はどんな星でどのようにして生まれたのだろうか?

 もっと別の観点で、ブラックホールは本当にあるのだろうか?ダークマターやダークエネルギーと言う考え方は正しいのだろうか?私たちの知っている物理法則(相対性理論や量子力学)は巨大な宇宙空間や、超強重力の元でも十分正しく成り立つのだろうか?。。。

 このようにいろいろな疑問を抱きつつ宇宙観測を進め、宇宙を、自然を理解することが、宇宙の中の人間の存在そのものを再認識するために私たちに課せられた、永遠の課題であると思います。

 そのために、いろいろな手段で宇宙を観測しつつ、また、物理の理論や数学、コンピューターによる計算を使って研究が続けられています。

 X線による天体観測は、初期はブラックホールや中性子星のような特別にX線で明るい天体の観測が主で、特殊な天体、宇宙の特殊な環境を観測する手段として始まりました。そして、人工衛星の利用やX線検出技術、X線望遠鏡の開発が進んで、感度がどんどん良くなった結果、今では、ほとんどあらゆる天体を観測することができ、宇宙を理解するにはX線のデータが不可欠となってきました。普通の星、いろいろなガスの天体、銀河や、銀河団ではX線の観測により、私たちの宇宙の理解が大きく変えられました。今、この時間も、日本の「すざく」衛星、アメリカの「チャンドラ」衛星や「フェルミ」衛星、ヨーロッパの「ニュートン」衛星が観測を続けています。

 次期のX線による天体観測用の人工衛星の計画も進んでいます。日本では「ASTRO-H」衛星を2013年に打ち上げることが決まり、今、詳細設計に取り掛かりました(http://astro-h.isas.jaxa.jp/)。全世界が結集してひとつの巨大な衛星「International X-ray Observatory」の計画(http://ixo.gsfc.nasa.gov/)を提案しようと、主に米国、ヨーロッパ、日本で作業が始まっています。そのほかにも、X線だけではなくていろいろな衛星、あるいは地上の望遠鏡の計画が提案されています。これらの計画が実現すれば、また、宇宙の新しい描像が生まれてくるでしょう。人間の想像をはるかに超えるような、宇宙の新しい事実がどんどん出てきてくることでしょう。5年後には、宇宙の描像が全く変わっているかもしれません。

現代は全く「わくわくするような宇宙探求の時代」と言えるでしょう。

今回で、私の話は終了です。仕事の合間に書いた雑文で、十分に調べることなく書いてしまい不正確なところや説明不足の所もあります。また、銀河団の話も少ししか書いていないし、重要な巨大ブラックホールを含む活動銀河核の話や、γ線バーストの話、宇宙ジェットの話、私たちの太陽系の近傍の話、宇宙の塵の話、普通の星そのものの話、銀河団間ガスの話等、まだまだ書き足りないところがたくさんあります。それは、また別の機会があれば書いてみようかと思います。

私の話を読んでくれた人の中でひとりでも、科学者を志す人、科学に関係する仕事を志す人、大人になってもずっと科学に興味を持ち続けてくれる人が増えてくれる事を心から祈っています。
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図:2013年度打ち上げ予定のASTRO-H衛星の想像図(JAXA提供)

(2009年4 月25日 (土)) | 個別ページ

宇宙を満たす物

前回は、銀河団はダークマター(暗黒物質)でできているといっても良いという話をしました。銀河団は宇宙で最も大きな、重力で束縛された天体であることもいいました。そうすると、宇宙の構成物のほとんどはダークマターと言うことになるのでしょうか?

 ところがどっこい、宇宙はさらに複雑でした。宇宙に存在する物質は万有引力によって互いにひきつける力を及ぼしあっています。また、宇宙はおよそ130億年前に、ビックバンと呼ばれる大爆発を起こし、そのときから宇宙全体が膨張し続けていることはご存知でしょうか?この膨張は、宇宙に存在する物質の引力で少しずつですが、抑制されると考えられます。この膨張の抑制がどの程度かによって宇宙は未来永劫膨張し続けるのか、あるいはどこかで膨張が収縮に転じるのか、ということが大変重要な問題で、多くの人により観測的にどうなっているのか調べられてきました。そして、最近分かってきたことは、それこそ、驚くべきことでした。宇宙の膨張は抑制されているのではなくて、徐々に早くなっている、すなわち加速膨張していることが観測から明らかになってきたのです。

 この加速の原因は何でしょうか?何らかのエネルギーが存在していて、そのエネルギーのために物質の万有引力によって引き付けあう力を振り切って膨張が徐々に加速していくと言うわけです。このエネルギーを「ダークエネルギー」と呼んでいます。かつてアインシュタインが万有引力の場を表す方程式「アインシュタイン方程式」を考えた時に、その方程式によると、宇宙は万有引力により収縮しなければいけないという結果になることに気がつきました。しかし、アインシュタインは宇宙が収縮してしまう、あるいは、始めや終わりがあることが考えにくい、すなわち定常であるべきと考え、その収縮を抑制するまだ知られていない謎のエネルギー(ダークエネルギーにそっくりな考え)を表す宇宙項と呼ばれる項を付け加えて、宇宙は定常であることができるように方程式を変更して論文を発表したことで有名です。アインシュタインがこの論文を発表した後に、宇宙は初期にビッグバンを起こして、現在でも膨張していることが観測的ないろいろな証拠も出てきて、宇宙は定常でないことが明らかになりました。アインシュタインは宇宙項を導入したことを、大失敗と思いたいへん後悔したそうです。

 ところが、今では、宇宙が加速膨張しているという観測事実から、再び、万有引力による収縮を抑制する、アインシュタインの導入した宇宙項とそっくりな「ダークエネルギー」の存在が提唱されるようになって来たのです。いまでは、宇宙のエネルギーのうち74%がダークエネルギーで、22%がダークマターそして、普通に私たちの知っている物質はわずか4%と考えられています。

 私たちの知っている物質はわずか4%、その他の96%はよく分からないものと言うわけです。私たちはまだまだ宇宙について分かっていないと言うことですね。
Graph
図:宇宙を構成するエネルギーの比率。普通の物質(Atoms)はたった4%、謎の重力源であるダークマター(Dark Matter)が22%, そして宇宙の膨張を加速するダークエネルギー(Dark Energy)が74%と考えられています。(NASA/WMAP Science Team 提供)

(2009年4 月 3日 (金)) | 個別ページ

銀河団とX線を放射する高温ガス

 X線で宇宙を観測することによって発見された大きな成果を話すとき「銀河団」の話をしないわけにはいきません。

 銀河団というのは「銀河」の「団」ですから、「銀河」がたくさん集まった天体です。「銀河」と言うのは、私たちが住む銀河系もそのひとつですし、同じような規模で星やガスが集まったものです。多くは楕円銀河や渦巻き銀河、あるいは棒渦巻き銀河と呼ばれる種類に分類されどれも美しい形をしています。私たちの住む銀河系のお隣の大きな銀河はアンドロメダ座大星雲と呼ばれる銀河です。秋の星座であるアンドロメダ座にあります。このアンドロメダ座大星雲は、月の出ていない秋の夜に空の暗いところに出かけて、星空を見上げると肉眼でもボヤーと光っている星ではない天体として見えます。そのような銀河が小さなものでは数十個、大きなものでは数千個集まってひとつの天体を形成しているものがあります。それが銀河団です。小規模なものは銀河群と呼ばれます。また、単独で存在する銀河もあります。図1はスバル望遠鏡が取った「かみのけ座銀河団」のほんの一部です。少しぼけて写っているひとつひとつが銀河です。そうすると、写っているものはほとんど銀河だと言うことが分かりますね。「かみのけ座銀河団」には、千個以上の銀河が集まっていることが分かっています。

また、この銀河団と呼ばれる天体は、たまたまたくさんの銀河が同じ方向に見えるのではなく、たくさんの銀河がお互いの重力で引き合って結びついている、ちゃんとした一塊の天体だと言うことに注意してください。そのように重力で引き合って結びついていると天体を、重力で束縛された天体と呼びます。銀河団は宇宙の中で、最も大きな重力で束縛された天体です。ですから、宇宙開闢以来、銀河団が何時どのようにしてできたのかと言う問題は大変興味あります。銀河がまずできて、それらが集まってきたのでしょうか?あるいは、はじめに大きな塊ができて、その中で銀河が生まれたのでしょうか?これは宇宙の進化を左右する大変重要な問題ですね。

 さて、図1の「かみのけ座銀河団」をみると、確かにたくさんの銀河が写っているけれど、銀河と銀河の間は隙間だらけですね。銀河と銀河の間の空間を銀河間空間と言います。この「かみのけ座銀河団」をX線で見ると図2のように見えます。普通、個々の銀河をX線で見ると、銀河の中にあるたくさんのブラックホールや中性子星、あるいは超新星残骸等のX線を放射している天体が見えます。また、銀河によっては、高温のガスをたくさん持っていて、それが結構明るいこともあります。まあ、それなりに個々の銀河もX線で光っています。ところが、銀河団をX線で観測すると、個々の銀河も光っているのですが、それにも増して、銀河団全体がボヤーとX線で輝いているのです。これは、銀河団の中の銀河間空間を満たす高温ガスです。可視光では決して見えなかったのですが、X線で見るとその姿が浮き上がって見えてきたのです。

 さらに驚くべきことがあります。この銀河団の中に満ちている高温ガスの質量を計算してみると、銀河団に含まれるすべての銀河の合計の質量より重いのです。「かみのけ座銀河団」では高温ガスの質量は個々の銀河の質量の合計のおよそ10倍はあるようです。すなわち、銀河団と呼ばれる天体は、銀河の集団というよりは高温ガスの塊だったというわけです。これが、X線で宇宙を観測して分かった大変重要な観測事実のひとつです。私たちが住む宇宙の構成物について、まだまだ知らないことが多いということを思い知らされたと言うわけです。

 ところが。世の中はまだまだ複雑です。実は、銀河団の全質量はいろいろな方法で推定できます。たとえば、この高温ガスの温度を調べてみます。およそ10億度という温度がX線のエネルギースペクトルから分かります。この10億度のガスが飛散せずに、万有引力によって束縛されています。高温のガスは、大きな速度(大きな運動エネルギー)を持って飛び回っているのです。小さな万有引力による引付なら、それを振り切って飛んでいってしまいます。でも銀河団では10億度のガスを引き付けておくだけの万有引力を持っているのです。その万有引力を作り出すには、高温ガス自身の質量のさらに10倍の質量が必要であることが計算できます。同じような計算は、重力レンズと呼ばれ現象を使ってもできます。この10倍の質量の元は何か分かりません。今ではダークマター(暗黒物質)と呼ばれています。なお、この10倍と言う数字は、銀河団によって異なります。一般に大きな銀河団ほど、大きな割合の高温ガスが、また、大きな割合のダークマターがあるようです。

ということで、銀河団は可視光で見ると銀河の集団だけれども、X線で見ると銀河の10倍の高温のガスがあって、さらに、その10倍のダークマターがあると考えられているのです。銀河団はダークマターでできているといってもいいですね。
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図1:すばる望遠鏡による「かみのけ座銀河団」の一部を拡大した写真。たくさんの銀河が写っています。

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図2:チャンドラ衛星によって撮影したX線による「かみのけ座銀河団」の写真。個々の銀河ではなくて全体に広がった高温ガスが見える。

(2009年2 月25日 (水)) | 個別ページ

中性子星、白色矮星(2)

前回は、白色矮星の話をしました。白色矮星は、物質がうんと縮まったときに、電子が「同じところに、同じ性質を持って存在できない」という性質があって、この性質が重力により縮むことに反発するために、星として保っている天体でした。ところが、この電子の性質にも限界があって、重力が強いとその限界を超えてしまいます。そして、電子は原子核、特に陽子とくっついて中性子になってしまって、白色矮星として存在できなくなり、つぶれてしまいます。普通の物質は陽子と電子の数は同じくらいあります。プラスのイオンがあると近くにマイナスのイオンがあって、まとめると電気的に中性になってしまうものです。ですから、電子が陽子とくっついて中性子になると言うことは、物質のほとんどが中性子になってしまうと言うことです。

 さて、電子で耐えられなくなってつぶれた場合、もうひとつ反発するものがあります。それは、中性子や陽子です。中性子と陽子は原子核を構成する物質なので、まとめて核子と呼びます。核子も「同じところに、同じ性質を持って存在できない」という性質をもつ「フェルミ・ディラック粒子」です。電子では耐えられなかったけれども、核子では耐えられる場合があります。この核子の性質が重力により縮むことに反発するために、星として保っている天体を中性子星と呼びます。中性子星の構成物はほぼ中性子だと言うわけです。太陽と同じ重さの中性子星の半径はおよそ10kmとなります。ちなみに、平均密度を計算してみると、太陽の質量は2.0x1033 gで、半径10km の球の体積は4.2x1018cm3 だから、密度は4.8x1014g/cm3となります。トンで表すと4.8x108 t/cm3、すなわち1cm3あたり4億8千万トンということです。          

 そして、さらに重くなって核子の反発力でも耐えられなくなった場合、どうなるでしょうか?もはや重力に反発するものが無くなり、星はつぶれてしまいます。それがブラックホールと言うわけですね。星が、結局小さな中性子星やあるいはブラックホールになってしまうとき、大きな重力エネルギーを開放します。そのエネルギーで外層の物質を吹き飛ばし、大変明るく輝きます。この現象が超新星爆発として観測されます。しかし、超新星爆発として、外層を吹き飛ばしたりする現象をうまく理論的に説明することはまだできていません。

 普通は、星間物質が集まり十分に重い天体ができて、その中心部で核融合反応が起こったとき星が生まれたことになります。その星は、はじめは核融合反応により発生した熱の力で自分の質量による重力を支えているわけです。その間に重い星は星風という現象で、表面から物質を吹き飛ばしますので、質量は減少していきます。そして、核融合反応が終了したときの質量で、白色矮星になるのか、超新星爆発を起こし中性子星になるのか、はたまたブラックホールになるのか決まるわけです。通常は、星がどんな質量で生まれたかで、核融合反応の進み方や終了する時期も決まり、また星風の量も決まります。したがって、単独に存在する星は生まれたときにすでに、最後はどうなるか運命が決まっていると言うわけです。

ただし、近所に相棒の星があったりすると、相棒の星から質量をもらったり、質量をあげたりすることがあります。「単独でいると決まっている運命も、周りの環境で変えることができる」というわけです。人間も実はそうだったりして?

(2009年1 月20日 (火)) | 個別ページ

中性子星、白色矮星(1)

超新星残骸で出てきたかに星雲の話で、中性子星とかパルサーとかが出てきましたね。これらについてまだ、詳しく説明していなかったようですね。星の進化、星の一生の話は少しだけ書いてありますが、中性子星の話をするにはその星の一生の話を復習して、さらに、物質についての説明をしなければいけません。ついでに白色矮星というものも説明しましょう。

 星が誕生して普通の太陽のような星になると、中心で核融合反応をおこし、膨大なエネルギーを出します。星の中心は大変熱く数千万度にもなります。また、普通に太陽のような星というのは気体でできていると考えてください。そうすると、星の内部は大変熱い気体と言うわけです。熱い気体は激しく動き回ります。星ですので、自分の万有引力のために縮もうとするのですが、その縮もうとする力に反発して、星として丸い姿をとどめているのが、この熱により激しく動き回る運動です。熱による圧力が高いといいます。この高い熱による圧力と万有引力がつりあって星として存在しているのです。

 星は誕生した時はほぼ水素でできています。ですから中心で起こっている核融合反応ははじめのうちは水素がヘリウムになる核融合反応です(以前に書きましたね)。この核融合反応がつづくと、やがて水素がなくなり、燃えカスのヘリウムが中心にたまります。もし、ヘリウムがそのまま燃えカスとして残ると、核融合反応が終わってしまうので、熱を出さなくなります。冷える一方になりますね。そうすると、万有引力のためにヘリウムのところが縮みます。縮むと、核融合反応をしなくても重力のエネルギーを開放して熱くなります。星の質量が十分大きいと、大変熱くなって、ヘリウム同士が、炭素や窒素、酸素になる核融合反応を起こします。あまり重くない星は核融合反応をおこさず、ある程度縮んでそのまま冷えてしまいます。「ある程度縮んでそのまま」になる理由は、物質を押し縮めたときに、それ以上縮まなくなる限界が存在するからです。

 ここから、星と言うより、物質そのものの知識が必要になります。物質は何でできているのでしたっけ?原子でできているのでしたね。そして原子は電子と原子核、原子核は陽子と中性子でできているのでしたね。これら、陽子や中性子、他にもいろいろありますが、素粒子と言います。物質の素ですね。(でも、陽子や中性子もクォークという粒子からできています。今年のノーベル物理学賞に関係しますね。)これら、素粒子は、いろいろな分類をすることができますが、次のような二種類に分類することもできます。ひとつは、「同じところに、同じ性質を持って存在できない」物で、もうひとつは「同じところに、同じ性質を持って重なって存在できる」物です。前者を「フェルミ・ディラック粒子」、後者を「ボーズ・アインシュタイン粒子」と呼びます。実は電子は「フェルミ・ディラック粒子」で、同じところに同じ性質を持って存在できません。この性質を「パウリの排他律」と呼ぶこともあります。原子を押し縮めると、原子の外側にまで存在する電子と電子が同じ場所に接近するので、この性質のために反発します。このような反発する力(圧力)を電子の「縮退圧」と呼びます。

 なんか、難しいことばかり書いてしまいましたが、これは、高校の物理学で少し、大学で理学部や工学部等に入学すると、大学での物理学や化学という科目で学習することになります。

 そして、この電子の「縮退圧」で、重力による縮もうとする力に反発して、星として保っている天体を「白色矮星」と呼びます。「白色矮星」は、この説明で想像がつくように、大変密度が高い星です。たとえば、太陽と同じくらいの重さの白色矮星はおよそ1万kmの半径となります。平均密度を計算すると、1立方センチメートルあたり480kgです。ずいぶん重いですね。

「こんな星がほんとにあるの」って?実は太陽を除いて最も明るい恒星である、「おおいぬ座」のα星「シリウス」は二つの星から構成される連星系です。そのうちの片方(可視光では暗いほう)は、ほぼ太陽と同じ重さの白色矮星なのです。今回は、この「白色矮星」までにしておきましょう。
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(2008年12 月22日 (月)) | 個別ページ

超新星残骸(5)

 超新星は、いろいろな形のものがあって、中には、中心に中性子星を残すものがあると書きました。中性子星を残さないものもあるし、また、ブラックホールを残したのかもしれないと考えられているものもあります。ブラックホールは単独で存在した場合観測が難しいので、観測的には証拠があるわけではないですが、超新星残骸を調べて、元の星の質量を推定すると大変重い星が爆発したに違いないと思われる場合、それは、ブラックホールができたに違いないと思われているのです。

 このように、超新星残骸の研究は、中性子星やブラックホールの起源として大変重要な意味を持つのですが、それ以外にも、超新星残骸の研究には大変重要な意味があります。

じつは、この研究は世の中の物質(元素)の起源に関係します。私たちの周りには、いろいろな元素がありますね。空気の中には、酸素や窒素、身の回りには、炭素や珪素、金属だと、鉄やアルミニウム、銅、銀、金…. といろいろな元素がありますね。私たちの体を構成する物質もいろいろなものがあります。大部分は酸素と水素が水として存在しますね。たんぱく質や脂肪は、炭素や窒素等、骨はカルシウム等が入っています。

 いろいろな元素のうち、水素やヘリウムは除いた、他の元素の大部分は宇宙ができた時から存在したわけではありません。宇宙ができた時は、水素とヘリウム、それに加えてリチウムやベリリウム等の軽元素が少しだけ作られました。では、その他の元素はどこで作られたのでしょうか?それらは、星の中で作られたのです。星は生まれたり、寿命を終了して超新星として爆発したりしますが、星が生まれて、星として存在している間に中心で水素やヘリウムが核融合反応を起こし、その結果、いろいろな元素が作られます。作られた元素の大部分は星の中心部に蓄えられます。そして星が超新星爆発を起こしたときに、蓄えられた元素の一部が、宇宙空間に撒き散らされるのです。また、蓄えたものばかりでなく、超新星爆発した時に核融合反応が起こり重い元素が作られ、それらもまた、宇宙空間に撒き散らされます。宇宙にある元素、水素とヘリウムを除いたほとんどの元素は、星の中で作られたか、超新星爆発の時に作られて宇宙にまき散らかされた物なのです。

 超新星爆発は、融合した元素を撒き散らすばかりではありません。宇宙空間にエネルギーを与えます。爆発した時、先ほどの融合した元素を含んだガスが、高速、すなわち大きな運動エネルギーを持って宇宙空間に飛び出てきます。また、同時に、ガンマ線やX線等の電磁波も放射します。高速のガスは星間ガスと衝突して衝撃波となり熱のエネルギーに変わります。高温になって、X線を出すようになります。それが、X線で輝く超新星残骸として見えているのですね。また、近くに比較的密度の濃い分子雲があると、高速のガスが分子雲に衝突します。そして、分子雲は圧縮されて、より密度の濃いところができます。そうして十分に密度の濃いところができると、そこが自分の重力で収縮を始めて、新たな星形成が始まることがあります。逆にX線等が周りのガスを電離したり、暖めたりしてガスの収縮を止めたりすることも考えられます。分子雲へのエネルギーの与え方で、星形成が進むのか、あるいは、星形成を抑制するのか、それぞれの状況によりいろいろな場合がありそうですが、それは、星形成の重要な研究の話題です。

 超新星残骸には、星の終焉と星の誕生を結びつける大変重要な鍵があるのです。宇宙の輪廻を研究しているわけですね。
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(2008年11 月20日 (木)) | 個別ページ

超新星残骸(4)

超新星残骸にはいろいろな形のものがあって、その中に中性子星と呼ぶ天体が存在するものがあると話しました。でもその超新星残骸の写真はまだでしたね。

 かに星雲という天体を聞いたことがあるでしょうか?別名M1(メシエ1)ともよばれます。おうし座にある星雲です。図1は日本の「すばる」望遠鏡で撮った可視光での「かに星雲」の写真です。細かく絡まるような線状の構造(フィラメントといいます)を持ったボヤーと光る星雲です。

メシエというのは人の名前です。メシエは18世紀にフランスで彗星を捜索していた人です。彗星を捜索するときに、彗星ではないけれど、星のように点状ではなくボヤーと光った天体があると、彗星と紛らわしくて困ったそうです。そこで、メシエはボヤーと光った天体のカタログを作りました。それをメシエカタログと呼びます。そのカタログの第1番に描かれているのがこの「かに星雲」です。

この星雲も超新星残骸です。前に書いた、藤原定家による名月記には1054年に爆発したと書き留められている天体です。この超新星残骸をX線でみると、図2のように見えます。これは米国のチャンドラ衛星が撮影したものです。中心の明るい点状のものが中性子星であるパルサーです。このパルサーはおよそ33ミリ秒の周期でX線の強度が明るくなったり暗くなったりしています。詳しく観測すると、1周期の間に2回明るくなったり暗くなったりします。中性子星が自転する間に、磁石の性質のN極とS極がそれぞれ1回ずつみえているのでしょう。また、全体はまるで帽子のようにみえるでしょうか?同心円状の光る部分と、中心からそれに垂直方向に噴き出すジェット状の構造が見えます。これらは高温のプラズマです。数ヶ月の時期を開けて撮影すると、この同心円状の構造は、池に石を落としたときに見られる波紋のように広がっていく様子も見られています。同じような超新星残骸はいくつか見られます。

これらは、丸い超新星残骸のように超新星爆発を起こしたときの噴出物がエネルギーを失いつつ輝いているものではありません。超新星爆発の時に作られた中性子星が、今でも高速で回転しているため、しかも、強力な磁石の性質を持って回転しているために、中性子星から高いエネルギーを持ったプラズマが周りの空間に巻き散らかされているのです。その巻き散らかされたプラズマが周りのガスにエネルギーを注入し周りのガスが光っていると考えられます。一方、中性子星の回転速度は徐々に遅くなっていることも観測からわかっています。ちょうど、周りのガスから放射されるエネルギー、それから、粒子として撒き散らすエネルギーの推定値の合計は、中性子星が回転速度を徐々に遅くなることによって失っている回転エネルギーとほぼ同じであることがわかっています。

 超新星爆発のときに放出したエネルギーの一部を中性子星の回転エネルギーの形で貯金しておき、その貯金を少しずつ使っているというわけです。
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図1:すばる望遠鏡で撮った可視項での「かに星雲」の写真

http://www.nao.ac.jp/Subaru/hdtv/m1_s.jpg

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図2:チャンドラ衛星によるX線での「かに星雲」の写真

http://chandra.harvard.edu/photo/2002/0052/0052_xray_widefield.jpg

(2008年10 月20日 (月)) | 個別ページ

超新星残骸(3)

X線で光る超新星残骸にはいろいろな種類があるのですが、ここまでは、主に丸い物の説明をしました。でも、もっと、いろいろな面白い形をしたものもあります。また、中心にパルサーと呼ばれる天体があるものもあります。このパルサーというのは、一部の超新星爆発で、元の星の中心部が中性子でできた星となって残ってしまった、そのような天体です。えっと、中性子という物は、説明しないといけませんね。

 物質というのは何でできているのでしょうか?多くのものは分子でできていますね。たとえば、水は水の分子でできています。空気は主に酸素分子と窒素分子の混合物ですね。では分子は何でできているのでしょうか? 原子でできています。水の分子だと、1個の酸素原子に2個の水素原子がくっついて分子を構成しています。空気を構成する酸素分子や窒素分子は、二つの酸素原子や二つの窒素原子がくっついたものですね。食塩とかは塩素原子とナトリウム原子が規則正しくならんだ結晶でできていますね。金属も原子の集まりです。鉄なら鉄の原子で、金なら金の原子が集まってひとつの金属となります。固体の金属の多くは原子が集まって結晶となっています。

 ですので、物質は原子でできているといえるでしょう。では、原子は何でできているのでしょうか?原子を調べていくと、原子核と呼ばれる中心の塊とその周りにぼんやり存在する電子でできています。原子核はプラスの電荷を持っていて電子はマイナスの電荷を持っています。原子全体の大きさに比べて原子核は大変小さく、直径でおよそ十万分の一程度です。たとえば原子の大きさを甲子園の大きさとすると原子核の大きさは1mm直径のゴマ粒ぐらいです。でも質量のほとんどはこの原子核に集中しています。

物質の性質の多くは、原子核の中のプラスの電荷の大きさと周りにある電子の数で決まります。普通は原子核のプラスと電子のマイナスがちょうど打ち消しあって電気的に中性になっているのですが、電子がはがされたりして、電荷を帯びてしまったものをイオンといいますね。物質を構成する原子の名前は原子核の持つプラスの電荷の数で決められています。たとえば酸素なら、原子核は電子の電荷のちょうど8倍(符号が逆ですが)です。電子の電荷の量をプラスにした値を素電価、あるいは電気素量といいます。酸素の原子核は8倍の電気素量の電荷を持っているのです。炭素なら6倍の電気素量の電荷です。

 原子核の電荷の量で物質の種類が決まるわけですが、(すなわち、金なら金、銀なら銀,銅なら銅)その原子核をもっと詳しく調べるとどうなっているでしょうか? 原子核は陽子と呼ばれるものと中性子と呼ばれるものから構成されています。陽子はちょうどプラスの電気素量の電荷を持っています。質量は電子に比べておよそ1836倍の質量があります。水素原子の場合は、原子核は陽子でその周りを電子がぼんやりと広がっているというイメージです。中性子というのは、陽子とそっくりの大きさや質量を持っているのですが、電荷がありません。水素以外の、原子核はこの電荷のない中性子とプラスの電荷を持った陽子で構成されています。なお、水素でも、陽子1個と中性子1個がくっついた原子核を持つものがあります。それは重水素と呼ばれます。性質は普通の水素とほとんど変わらないのですが、重さだけはほぼ2倍あります。さらに陽子1個と中性子2個がくっついた原子核を持つ水素もあります。それは三重水素と呼ばれています。他の原子も、中性子の数が違うものもあります。自然に存在する原子核はおおよそ、中性子の数と陽子の数が同じくらいです。でも、自然界には同じ炭素といっても、中性子の数が違うものもある程度の割合で含まれます。中性子と陽子は、原子の原子核を構成するものなので、核子と呼ばれます。

 この中性子でできた星、中性子星、というのが作られることがあるのです。太陽の質量と同じくらいの重さで、その構成物はほぼ中性子というわけです。そのうち、特に磁石の性質が強いものがあります。そうすると、中性子星の自転が原因で、X線強度が規則正しい周期性をもって変動するのです。そのような天体をパルサーと呼んでいます。陽子はほとんど含まれないのですが、巨大な原子核のようなものですね。ある種の星は最後にひとつの巨大な原子核を作るというわけです。
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図:物質は原子核とその周りに存在する電子でできている。原子核はプラスの電荷を持つ陽子と、電荷を持たない中性子でできている。

(2008年9 月25日 (木)) | 個別ページ

超新星残骸(2)

前回、アメリカのX線天文衛星による超新星残骸のイメージ、SN1006,カシオペア座A,ティコの超新星残骸、ケプラーの超新星残骸の4種類を示しました。これらは、全体的に大雑把に見ると丸い形をしています。まあ、まん丸というよりは、少しいびつだったりしますけれど。さらに見ると、太いリングのようにも見えますね。でも、これは、円やリングではなくて、分厚い球殻と考えるのがよさそうです。円やリングが、ちょうど私達の方向に平たい面を向けるということはめったにありえません。にもかかわらずたくさんの超新星残骸が丸いということは平面ではなく球状に違いありません。また、リング的に見えるのは、分厚い球殻と考えればよいです。すなわち端は比較的奥行き方向に長い距離にガスが詰まっていますが、真ん中あたりは、割と奥行きが薄くなりますね。そのために、周りがより明るくて、真ん中が少し暗いように見えます。でも、それぞれ、いろいろな形をしています。それは、爆発の状態や周りの環境によるものだと思われます。まあ、大雑把に言って、星が爆発した時に、星を構成していた物質が非常に早い速度で飛び散るのですが、その飛び散り方がわりと等方的であることを意味しています。

 前々回には星間空間でも、冷たいガスから熱いガスまでいろいろ存在することを書きました。星が爆発する時に物質が飛び散るわけですが、それは、元からある星間空間のガスの中で、飛び散ることになります。もともとあったガスは、爆発で飛び出てきたガスによって、掃き出されるように、やはり、同じように外に向かって押し出されていきます。元の星から飛び出たガスは星からのejecta(噴出物?)と呼ばれます。このejectaの周りには特に殻があるわけではないのですが、宇宙のような大きなスケールで見ると、ejectaの端に境界があってその周りに、もとからあった星間ガスが乗っているようになります。この境界を接触不連続面と呼びます。接触不連続面の上に乗っている星間ガスは、結構早い速度で押し出されます。これは、宇宙空間を伝わる音の速度より速い速度です。すなわち、接触不連続面の上に乗っかっている星間物質は早い速度で膨張しているのですが、そこから少し離れた領域では、非常に速い速度で膨張してくるejectaやその上に乗っかっている星間物質の存在を知らないことになります。なぜなら、膨張速度は音波より速いからです。 空気を圧縮したら、それが元に戻ろうとする波ができますが、その波の伝わる早さが音速です。接触不連続面の上に載っている星間物質は圧縮されているのですが、その圧縮された原因で波ができて伝わる早さが音速です。でも、膨張速度が音速より速いので、音波は伝わらないのです。だから、接触不連続面の上に載っている星間物質より外は、そんなものがやってくることに全く気がついていないというわけです。ですので、ここでまた、不連続なところができます。接触不連続面の上に載っていて高速で膨張している部分と、その外の境界です。このような境界を衝撃波面と呼びます。そこでは、星間物質と広がりつつある物質が激しくぶつかっているので高温となり、X線も放射すると考えられます。チャンドラ衛星のイメージを見ると、一番外側になにやら細い線状の構造が見えますが、それがその衝撃波面では無いかと考えられています。

 接触不連続面より内側を考えて見ましょう。内側では、もともと星を形成していたガスの噴出物、ejecta、が高速で飛び散っています。接触不連続面は、外側に星間物質が乗っかっているので、少し速度が遅くなってしまっています。そのためん、接触不連続面に向かってあとからあとからejectaが衝突を続けます。接触不連続面の内側には、ejecta、が、たまってきます。たまった部分より内側では、ejecta が接触非連続面に向けてまだ走ってきます。その先にぶつかるものがあることも知らずに走ってくるというわけです。従って接触不連続面の内側にも境界ができます。接触不連続面の内側に溜まって接触不連続面とお供に膨張している部分と、それより内側で、より速い速度でどんどん広がっている部分です。その境界では、内側からどんどん物質がやってきて衝突しているというわけです。これも衝撃波です。衝撃波のところでは、物質が衝突しているので、大変たくさんのエネルギーが発生して、ガスは高温になり、X線が放射されます。衝撃波の面だけでなくて、接触不連続面と衝撃波の間の物質も高温でX線を放射します。

このようにして、割と分厚い球殻の熱いガスが宇宙のシャボン玉のように形成されると考えられています。
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図 星間ガス中での超新星爆発の様子。接触不連続面が超新星からの噴出物(ejecta)と星間物質の境界。接触不連続面の前と後ろに衝撃波ができる。

(2008年8 月20日 (水)) | 個別ページ

超新星残骸(1)

星と星の空間(星間空間)には、冷たいガスから熱いガスまで、いろいろ存在することを書いてきました。そして、熱いガスからはX線が放射されていることも書きました。

さて、X線の空の写真をもうちょっと詳しく見ると、輝度の高いところがぽつぽつとあります。それらのいくつかを拡大したものを図1から図4に示しました。特に今回は、わりと丸い物を集めました。写真はアメリカのX線天文衛星「チャンドラ」により撮像されたもので、ホームページで公開されています。丸くないものもあるのですが、それらは後回しにして、ここでは丸いものだけの話としましょう。

 これらは、昔、星が大爆発を起こして星を構成していた物質を、非常に大きな速度で星間空間にまき散らかした結果できたものです。星は永遠に輝くものではなくて、やがて燃料を使いきって、あるものはそのまま冷えていくし、あるものは最後に大爆発を起こします。その大爆発の結果が図に示したようなきれいな天体を作るのです。大爆発を起こすと、可視光でも明るく輝きます。可視光で星を観測していると、明るくなったり暗くなったりする星がいろいろあるのですが、この大爆発はその中でも特に激しく明るさが増加します。

ほんとは元の星があったのですが、あたかも、何も星が無かったところに突然星が現れたように見えます。そして、数ヶ月かけて、また消えてしまいます。このような爆発現象を超新星爆発、あるいは、単に超新星と呼ばれるようになりました。そして、その超新星が爆発して、星を構成していた物質を星間空間に撒き散らした結果、長期間にわたり高温状態を保ち、X線等で輝くようになります。このような天体を超新星残骸と呼びます。ちなみに、新星という現象もありますが、それは、もう少し明るさの増し方が少ない別の現象です。

 超新星の中には、お昼でも見えるくらい明るく輝いたものがあったそうです。昔から、人々は星に関心を持って、天体観測を行ってきたようですが、この超新星が現れると、一般に不吉なことが起こる前兆だといわれていたそうです。とにかく昔の人々は大変驚いたに違いありません。ですので、いくつかの超新星は、昔の文献の記述として残されています。有名なものは、歌人として知られる藤原定家(1162-1241)の日記といわれる「明月記」の中の記述です。

              「後冷泉院・天喜二年四月中旬以降の丑の時、客星觜・参の度に出づ・東方に見わる。天関星に孛(はい)す。大きさ歳星の如し。」

と書かれています。これは、年代(天喜2年というのは1054年にあたる)から考えて定家が観測したわけではなく、伝え聞いた現象の記述だそうです。そうですね、1054年は定家はまだ生まれてませんね。また、歳星というのは木星のことです。木星程度の明るさになったというのは、まさに超新星のことを書いているわけです。「客製觜・参の度」の場所はオリオン座、天関星というのはおうし座ζ星だそうです。この記述に対応する場所には、「かに星雲」と呼ばれる天体が存在します。これが、1054年の超新星の残骸に違いありません。その他にも明月記には 1006年の超新星にも言及しています。

  「寛弘三年四月二日癸酉夜以降、騎官中有大客星」

と記されています。寛弘三年四月二日癸酉というのは西暦1006年5月1日で騎官というのはおおかみ座のことです。大客星と書いているのでずいぶん明るかったのでしょう。その超新星残骸は、現在ではSN1006とよばれており、現在X線で見ると図1のように見えます。なお、2006年には、ちょうど千年を記念して、また、日本のX線天文衛星「すざく」の活躍を記念して、京都で国際会議を行いました。外国人が200人以上、日本人も200人以上参加した大研究会でした。

その他に歴史的に観測されたことで有名なのは 1572年に出現して、天文学者ティコ・ブラーエにより観測されたものと1604年に物理学者ヨハネス・ケプラーにより観測されたものです。それらの超新星残骸はそれぞれ、ティコの超新星残骸、ケプラーの超新星残骸と呼ばれています。図2と図3がそうです。同じ頃、1667年頃と推定されていますが、もう一つの超新星爆発があったはずです。現在、カシオペア座Aと呼ばれている超新星残骸(図4)がそうです。ところが、1667年頃に超新星があったという文献は今のところ世界中どこにも無いようです。ここからは推測ですが、ヨーロッパではイギリスやオランダが戦争をしていました。また、中国では明から清への過渡期で政治が安定してなかったのじゃないかと思われます。でも日本では1667年は江戸時代が始まって安定していた頃ですね。徳川家綱が将軍の頃です。そのように考えると、日本で記録があってもよさそうな気がしますね、徳川幕府は「天文方」といって天体観測をしながら暦を作る部署があったはずだと思って調べてみると、1684年までは、朝廷の陰陽寮というところが暦を作っていたそうです。そして、1684年から幕府の寺社奉行に天文が方ができたそうです。1684年といえば、カシオペア座Aが爆発したと考えられている1667年より少し後ですね。記録に残っていないのはこのせいかもしれません。しかしながら、ホントにカシオペア座Aが爆発した時は、明るく光らなかったという可能性もあるそうです。これは、超新星爆発の理論と、カシオペア座Aの観測がもっと進むとわかってくるかも知れません。
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図1.超新星残骸SN1006のX線による像。アメリカのX線天文衛星チャンドラが撮影したものです。http://chandra.harvard.edu/photo/2008/sn1006c/index.html から掲載させていただきました。
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図2.超新星残骸カシオペア座AのX線による像。アメリカのX線天文衛星チャンドラが撮影したものです。http://chandra.harvard.edu/photo/2005/casa/casa_xray.jpg から掲載させていただきました。

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図3.ティコの超新星残骸のX線による像。アメリカのX線天文衛星チャンドラが撮影したものです。 http://chandra.harvard.edu/photo/2005/tycho/tycho.jpg から掲載させていただきました。
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図4.ケプラーの超新星残骸のX線による像。アメリカのX線天文衛星チャンドラが撮影したものです。 http://chandra.harvard.edu/photo/2007/kepler/kepler.jpg から掲載させていただきました。

(2008年7 月22日 (火)) | 個別ページ