前回は、「ダークマター」や「ダークエネルギー」といった、正体不明のエネルギーが宇宙の大部分を構成していることを話しました。これら、正体不明の物に関する謎に加えて、もっといろいろな問題が山積みです。また、これまでの歴史から分かるように、今は、正しいと思われていることも、100年後、いや10年後には修正されているかもしれません。あるいは全く間違っているかもしれません。それらは、実験や観測から事実を調べることと、論理的な考え方とで、正しいのか、修正が必要なのか、あるいは根本的に間違っているのかが明らかになってきます。
いろいろなことに疑問を持ってより正しく宇宙を観測して、見えてくる事実を論理的に解釈をすることで、科学が進み、人間が考える宇宙観、自然観が変遷していくのです。
宇宙がどのように進化して今のような形になったのだろうか? そして、これから宇宙はどうなっていくのだろうか?何時ごろ、天体が形成されたのだろうか?また、巨大ブラックホールが形成されたのは何時で、それらが周りの環境にどのような影響をあたえてきたのであろうか?また、ブラックホールの性質はどんなもので、そのまわりはどうなっているのだろうか?中性子星の内部はどうなっているのだろうか?降着円盤の構造は今考えられているモデルでよいのだろうか?超新星の爆発のメカニズムやその残骸の進化、そしてそれが宇宙や銀河の進化にどんな影響を与えているのだろうか?宇宙に存在する元素の多くは星で作られ、超新星として星間空間に巻き散らかされているのだけれど、どのような道筋をたどっているのだろうか?星はどのようにして生まれるのだろうか?宇宙で一番初めに生まれた星はどんな星でどのようにして生まれたのだろうか?
もっと別の観点で、ブラックホールは本当にあるのだろうか?ダークマターやダークエネルギーと言う考え方は正しいのだろうか?私たちの知っている物理法則(相対性理論や量子力学)は巨大な宇宙空間や、超強重力の元でも十分正しく成り立つのだろうか?。。。
このようにいろいろな疑問を抱きつつ宇宙観測を進め、宇宙を、自然を理解することが、宇宙の中の人間の存在そのものを再認識するために私たちに課せられた、永遠の課題であると思います。
そのために、いろいろな手段で宇宙を観測しつつ、また、物理の理論や数学、コンピューターによる計算を使って研究が続けられています。
X線による天体観測は、初期はブラックホールや中性子星のような特別にX線で明るい天体の観測が主で、特殊な天体、宇宙の特殊な環境を観測する手段として始まりました。そして、人工衛星の利用やX線検出技術、X線望遠鏡の開発が進んで、感度がどんどん良くなった結果、今では、ほとんどあらゆる天体を観測することができ、宇宙を理解するにはX線のデータが不可欠となってきました。普通の星、いろいろなガスの天体、銀河や、銀河団ではX線の観測により、私たちの宇宙の理解が大きく変えられました。今、この時間も、日本の「すざく」衛星、アメリカの「チャンドラ」衛星や「フェルミ」衛星、ヨーロッパの「ニュートン」衛星が観測を続けています。
次期のX線による天体観測用の人工衛星の計画も進んでいます。日本では「ASTRO-H」衛星を2013年に打ち上げることが決まり、今、詳細設計に取り掛かりました(http://astro-h.isas.jaxa.jp/)。全世界が結集してひとつの巨大な衛星「International X-ray Observatory」の計画(http://ixo.gsfc.nasa.gov/)を提案しようと、主に米国、ヨーロッパ、日本で作業が始まっています。そのほかにも、X線だけではなくていろいろな衛星、あるいは地上の望遠鏡の計画が提案されています。これらの計画が実現すれば、また、宇宙の新しい描像が生まれてくるでしょう。人間の想像をはるかに超えるような、宇宙の新しい事実がどんどん出てきてくることでしょう。5年後には、宇宙の描像が全く変わっているかもしれません。
現代は全く「わくわくするような宇宙探求の時代」と言えるでしょう。
今回で、私の話は終了です。仕事の合間に書いた雑文で、十分に調べることなく書いてしまい不正確なところや説明不足の所もあります。また、銀河団の話も少ししか書いていないし、重要な巨大ブラックホールを含む活動銀河核の話や、γ線バーストの話、宇宙ジェットの話、私たちの太陽系の近傍の話、宇宙の塵の話、普通の星そのものの話、銀河団間ガスの話等、まだまだ書き足りないところがたくさんあります。それは、また別の機会があれば書いてみようかと思います。
私の話を読んでくれた人の中でひとりでも、科学者を志す人、科学に関係する仕事を志す人、大人になってもずっと科学に興味を持ち続けてくれる人が増えてくれる事を心から祈っています。
図:2013年度打ち上げ予定のASTRO-H衛星の想像図(JAXA提供)












